近年，不特定多数の人に大量に業務を依頼するクラウドソーシングの適用場面は多岐にわたり，応用範囲も広がってきている．クラウドソーシングは安価かつ大量にデータを得ることを可能とする一方で， 不特定多数のワーカーに回答を依頼するという特徴上，回答の品質にばらつきが生じてしまうという課題がある．品質管理問題に関する研究として，１要素データが回答として得られるタスクにおける回答統合手法は多数提唱されてきているが，ランキングや文章整序などで必要となる順序データに対してクラウドソーシングを適用した場合の品質管理手法に関する研究はこれまでほとんど行われていない．そこで，本研究では統計的手法としての順序データに対する先行研究である距離ベース型確率的順序生成モデルを採用し，勾配法を用いた尤度関数の最大化と，Spearman距離における重みつきモード順序の導出により，ワーカーの能力と真の順序を交互に最適化するモデルを提案した．実データで解析を行った結果，提案モデルを用いることで，より真の順序に近い順序を推定すること，各ワーカーの能力を適切に評価することが可能であることが示された．