数理情報第3研輪講

日時
2010年12月8日(水), 15:00〜17:00.
場所
東京大学 工学部6号館 235号室.
講演者
深堀 康紀 (M1)
題目
BiCG法の,安定化多項式及び高次のshadow residualを付加した拡張手法について(サーベイ)
概要

係数行列が大規模非対称な疎行列である連立一次方程式の数値解法として近年,IDR定理に基づく反復解法であるIDR(s)法が注目を集めている.この数値解法は,BiCG法に1次の安定化多項式と高次のshadow residualを付加した手法とみなせる.理論的には,この手法では行列のサイズをN×Nとしたとき,高々N+N/s回の行列ベクトル積によって真の解に到達するという性質をもち,実際の数値実験においても既存手法より計算量・安定性の面で優れていることが示されている.さらに,2009年には,IDR(s)法を高次の安定化多項式へ一般化したIDRstab(s,L)法[4]とGBiCGSTAB(s,L)法[2]が提案された.また,[1]ではこれらの手法に自動残差修正方式[3]を実装することによる,偽収束の発生を抑制した改良手法が提案されている.
本発表では,これらの手法の,BiCG法の改良手法としての位置づけについて,既存手法の紹介を交えながら説明し,GBiCGSTAB(s,L)法に自動残差修正方式を実装したAC-GBiCGSTAB(s,L)法を紹介する.また,その数値性能について,[1]の追実験を行ったので,この結果を示す.

参考文献

[1] 塚田健:一般化IDR定理に基づく反復解法に関する研究, 東京大学大学院情報理工学系研究科修士論文, 2010.
[2] 谷尾真明:双共役勾配法の拡張に関する研究, 東京大学大学院情報理工学系研究科修士論文, 2009.
[3] 櫻井隆雄,直野健,恵木正史,猪貝光祥,木立啓之,小路将徳:高速性と信頼性を両立するAC-IDR(s)法の提案と評価, 情報処理学会研究報告, 2008 (74), pp. 49--54.
[4] G. L. G. Sleijpen, M. B. van Gijzen: Exploiting BICGSTAB(l) Strategies to Induce Dimension Reduction, SIAM J. Sci. Comput., vol. 32, No. 5, pp. 2687--2709, 2010.

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