数理情報第3研輪講

日時
2010年4月6日(火), 17:15〜19:00.
場所
東京大学 工学部6号館 235号室.
講演者
相島 健助 (D3)
題目
Hessenberg形の正規行列に対するマルチシフトQR 法の大域的収束性について(文献紹介)
概要

行列の固有値計算では,通常与えられた行列をまず直交同値変換によりHessenberg行列に変換し,このHessenberg行列の固有値を計算する.QR 法はHessenberg行列の全固有値を計算する有力なアルゴリズムである.このQR法の並列化の研究の中で,シフトを複数導入するマルチシフト QR 法が近年注目されている.本発表では,このマルチシフト QR 法の大域的収束に言及した論文[1]を紹介する.紹介文献[1]は,行列のクラスを正規行列に限定しているものの,非対称行列に対するシフト付QR法の収束証明を初めて与えた論文と見なされており,その意味で重要な結果と言える.本発表ではこの収束定理とその証明を示す.証明においては,正規行列の性質がキーになる式変形がいくつか登場するので,そこに着目しておおまかな流れを概観することにする.また,対称行列に特化してマルチシフトQR法の大域的収束を証明した論文[2]も合わせて紹介し,[1]との関係を示すことにする.

参考文献

[1] H. J. Buurema, A geometric proof of convergence for the QR method, Thesis, Rijksuniversiteit Te Groningen, 1970.
[2] E.-X. Jiang, A note on the double-shift QL algorithm, Linear algebra appl. 171 (1992), 121-132.

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