近年の証券市場の機械化に伴い，高頻度価格時系列が得られる環境が整うと同時に，その振る舞いを記述する力学モデルが提案され始めている． とりわけ指値注文市場(東証，LSEなど)における価格形成の力学モデルとして，投資家の合理性を仮定しないSmithら[1][2]のゼロインテリジェンスモデル(ZIM)が注目されている． 本研究では，強い仮定に基づいたZIMの注文到着過程の改良を目論み，実際の取引データの分析を行った．発表においては実データ分析によって確認された指値のべき分布性，および注文到着のアンカリング効果について紹介し，これらの性質を組み込んだ新たなモデルとその精度について議論する．

[1] Daniels, M. G., Farmer, J. D., Iori, G. & Smith, E. Quantitative Model of Price Diffusion and Market Friction Based on Trading as a Mechanistic Random Process, Phys. Rev. Lett. 90, 2003.
[2] Smith, E., Farmer, J. D., Gillemot, L. & Krishnamurthy, S. Statistical theory of the continuous double auction, Quant. Finance 3, 481-514, 2003.