メモ」カテゴリーアーカイブ

文献・図書等に関する情報

■そもそも見るべきURL群

■文献を検索する

上の,総合図書館の各種メニューの中に独自の検索エンジンもあるようだが(例:TREE),松尾はあまり活用していない.松尾がよく使うのは以下のとおり.

  • MathScinet:アメリカ数学会の提供する文献検索サービス.数学系を網羅.
  • google scholar:なんだかんだで便利.ある論文を引用している論文も調べられる.

■電子書籍を読む

現在,東大では様々な電子書籍を利用できる.これらはダウンロード可能だが,当然のことながら著作権上,利用の形態は限られるので注意すること.利用可能な電子書籍の範囲は,東京大学で利用できる電子ブックにある.

数理3研近辺で特に有用なのはSpringer社の書籍.これらにアクセスするときは,(Springer をググッて springer.com から本を探しに行くのではなく)上のページにあるリンクを踏んで SpringerLink から行くこと(左にそのリンクを貼っておきました).東大から全 Springer 書籍が見えるわけではなく,以下のようなものが見えるはず.いずれにしても SpringerLink から行ってみて,鍵マークが付いていなければダウンロード可能.

  1. Lecture Notes in Computer Science(1973-1996, 2005-現在):コンピュータ科学のレクチャーノートシリーズの書籍.
  2. Lecture Notes in Mathematics(1964-現在):数学のレクチャーノートシリーズの書籍.
  3. eBook Collection: Mathematics & Statistics(原則として2005年以降):Springerの電子書籍のうち,数学・統計セクションの書籍.

最初の2つは「レクチャーノートのうち」という言い方であるが,最後は切り口が違っていて「内容的に数学・統計分野の本を」という言い方になっている.これは大変広範囲で強力なカテゴリだが,残念ながら2005年より古い本はほとんど見られない.

■数理3研付近でよく読む雑誌

下記URLは(自分用に)東大内から,閲覧可能な形でアクセスする際のURLになっているので注意.(学外の方はこのURLを踏んでもエラーになる恐れがあります.)また,古いものは下記URLではダメで,別なURLから行かないと見えないものもある.その場合は,冒頭に述べた「E-journal portal」からどのURLから見に行けるかを調べること.最悪,どのURLから行っても電子的には見られない古い文献もある.その場合は同じく冒頭の「MyOpac」などから東大内に冊子体としてあるかどうか調べ,それに基づいて「注文」することになる.

SIAM:

  1. SIAM Review (SIREV)
  2. SIAM J. Numer. Anal. (SINUM)
  3. SIAM J. Sci. Comput. (SISC)
  4. SIAM J. Matrix Anal. Appl. (SIMAX)
  5. SIAM J. Math. Anal. (SIMA)
  6. SIAM/ASA J. Uncertainty Quant. (JUQ)

Springer:

  1. BIT Numer. Anal.
  2. Numer. Math.
  3. Found. Comput. Math.
  4. J. Sci. Comput.
  5. Japan J. Indust. Appl. Math.(※東大は閲覧権限なし)

IOP science

  1. J. Phys. A
  2. Nonlinearity

Oxford

  1. IMA J. Numer. Anal.

Cambridge

  1. Acta Numer.

AMS

  1. Math. Comp.

Elsevier

  1. J. Comput. Appl. Math.
  2. J. Comput. Phys.
  3. Linear Alg. Appl.
  4. Physica D

(※この部分は,宮武勇登さんのページを参考に作りました.)

“The Bicentennial Man” I. Assimov

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centerstar “—`Freedom is without price, Sir,’ said Andrew. `Even the chance of freedom is worth the money.'”
from
“The Bicentennial Man” by Isaac Asimov

言わずと知れたSF小説の大家,Isaac Asimovによる一篇から.この作品は1976年にアメリカ建国200周年を記念したオムニバス作品集の一篇として書かれたが,その企画自体が頓挫し本作品は通常のAsimov自身の一篇として出版されたらしい.この経緯のため,作品タイトルはそのものずばり「200周年の男」である.

物語は,Martin一家のところにお手伝いロボットNDRがやってきたところから始まる.幼い次女,リトル・ミス(Little Miss)はその記号を正しく読めず,”Andrew”(記号 NDR の英語発音「エンディアール」を思い浮かべてみること)と呼び始めたことから,「彼」はロボット Andrew として暮らすことになる.Andrew はとても特殊なロボットで,リトル・ミスに木彫りのペンダントを作ってプレゼントするなど驚くほどの創造性を見せる.寛容な Martin 家主人は Andrew の好きにさせ,また「アーティストには対価が支払われるべきだわ」というリトル・ミスの提案を容れて,作品の売り上げを Andrew 自身の貯金として扱うようになる.やがて時代が立ち,リトル・ミスが結婚して子供を作る頃,何世代も新しいロボットが作られるようになっても,Andrew のように人間らしいロボットが誕生することはついになかった.

Andrew は,ロボットである自分に優しい Martin 一家に感謝しつつ,少しずつ,「本当の人間になりたい」と願うようになる.あるとき Andrew は,そのための第一歩として,Martin 家主人に「自分を『自由』にして欲しい」と懇願する.「人間」は,他の誰にも所有されないものだからだ.さすがの主人も,これには驚いて反論する.ロボットが資産を持つことすら本当はグレーゾーンなのに,人間に所有されないと宣言することで社会がどう反応するか,その結果,Andrew が貯めたお金—その頃には60万ドル(6000万円)程にもなっていた—は,正当な所有者がいないものとして没収されてしまうかもしれない,そのことを考えてみなさい,と.

冒頭の台詞は,それに対して Andrew が答えたものだ.

「・・・自由であることに値段などつけられません,旦那さま.」アンドリューは言った.「自由の,そのかけらですら,すべてを投げ打つに値するのです.」(拙訳)

「自由」の国,アメリカの建国200周年に相応しい台詞である.また,その200年の間に,アメリカにも不幸な歴史があったことも我々は思い出すべきだろう.人間は,決して他人には所有されないものなのだ.Asimovは,そのことをSF作家としての立場で,ロボットに語らせることで我々に訴えかける.

Andrew は無事に自由を勝ち取り,やがて様々な改良「手術」を受け,限りなく人間へと近づいてゆく.反対に,人間も人工臓器などの発展である意味ではロボットへと近づいていく.それらが漸近するとき,果たして,人間とロボットの境目はどこにあるのか.それらが究極に近づいた暁にも,両者は依然として線引きはできるのか.これは古くから語られてきたトピックだが,ロボット工学が急激に進化し,また人工知能が新世代に入った本稿執筆時点で,改めて考えさせられる論点である.

この作品で,Asimov は無論この問題の答えは出さない.その代わり,Andrew が生産されて,いや「生まれて」200年が経つ頃・・・Andrew に優しくしてくれた,大好きなリトル・ミスも他界して100年以上が経った頃,究極の「人間らしさ」を求めて,Asimov は彼にあるひとつの決断を下させる.Andrew が最後に辿り着いた先がどこか,ぜひ作品を読んで確かめてみて欲しい.

ラストの台詞に,我々人間は,思わず涙をこぼさずにいられないだろう.

出張に行くとき

出張の際の持ち物リストなど,自分用の備忘メモですが,参考になるかもしれないので公開します.
主に海外出張を想定して書きますが,一部は国内出張でも当てはまります.

海外出張の持ち物

【手荷物】
スマホ
パスポート
財布(普段使ってるものはもちろん,現地小銭用を1つ持っていくと混乱せず便利)
e-ticketコピー (なくても乗れるが念のため.タブレット可)
ホテル予約確認コピー(現地でタクシー運転手に見せられるもの)
機内セット(スリッパ,靴用の袋,ペン※1)
コンタクトレンズ予備 (長時間フライトの場合,乗ったら外して着陸寸前に予備を装着)
ノートPC (電源ケーブル,VGA拡張アダプタ含む※2)
タブレットとイヤホン (※3)
USBケーブル (※4)
その他資料等

【スーツケース】
シャツ・下着×宿泊数 (シャツ,上下下着,靴下※5)
ジャケット (会議ディナー等用)
就寝用(スウェット上下,Tシャツ)
薬(酔い止め,下痢止め,風邪薬,胃薬等)
コンタクトレンズ
洗面セット
各種ケーブル(USB充電アダプタ,各種USBケーブル,三ツ口タップ※6)
有線→無線アダプタ(※7)
室内履き(※8)

※1:エコノミークラスは狭い.足下も狭い.そこで,私は飛行機に乗った瞬間に持参したスリッパに履き替え,(ここがポイントなのだが)脱いだ靴はビニール袋(コンビニ袋などでよい)に入れて頭上のコンパートメントに入れてしまうことにしている.足下が(まだしも)広くて快適!なお,人によってはアイマスクや耳栓,空気式枕などを持ち込む人もいる.色々試した結果,私は,要らない,という結論.ペンは,大抵の場合機内で出入国カードを書くことになるのでそのときに.
※2:ノートPCは重たいのでスーツケースに入れたくなるが,航空会社の規定では破損しやすいものは入れてはいけないことになっている.また,紛失等もありうるので手荷物が原則.発表前(=行き)であれば,拡張アダプタ等,ないと発表ができなくなるものもとにかくすべて手荷物.なお,発表スライドは,クラウド上などネット接続さえできれば取得できるところにも置いておき,最悪の場合でも(他人のPCを借りてでも)発表自体はできるようにしておくこと.
※3:機内映画は大抵つまらないので,タブレット等に電子書籍なり音楽なり動画なり(著作権OKなものに限りますよ)何なり時間つぶしができるものをいれておくのが吉.なお,持参のイヤホンを機内エンターテイメントシステムに接続したい場合は,航空機用のアダプタが必要になることがあるので注意すること.(最近は,ミニプラグが直接させるようになっている機体も増えている.)
※4:最近の機体はUSBポートを備えていて,USBケーブルでスマホやタブレットを繋ぐと,充電できるようになっている.ACコンセントもついている機体もあるが,USB経由で充電するものであれば,かさばるACアダプタを持ち込むよりUSBケーブル1本だけ持ち込む方がラク.iPhone/iOS系であれば,接続端末内の動画や音楽を機内エンターテイメントシステムで再生できる模様.(Android系はほとんどダメ)
※5:この辺は個人の趣味嗜好に合わせて適当にやればよいが,普段からくたびれてきてそろそろ捨てようと思っているものを溜めておき,旅行のときに持っていって,脱いだら(洗って再利用せず)捨てる,というのも一案.Yシャツの類も,くたびれたものを使い捨ててしまい,最近はどの国でも大抵あるH&MやZARAなどのファスト・ファッション店で買い直せば,衣類の在庫入れ替えにもなり一石二鳥.
※6:あると重宝するのが三ツ口タップ等,コンセント口を増やす機器.ホテルは,案外コンセントが少ないことがある.なお,厳密に言うと240Vまで対応した機器でないとダメなので注意すること.大手家電店の海外用品コーナーで海外対応のタップを売っている.(日本で売られている三ツ口タップはほとんどが100V以外非対応.)
※7:これは便利!手のひらに収まる位の大きさで,有線LANを無線LANに変換するものが色々売られている.つまり,極小の無線LANルータ.有線LANポートに挿すと,自動的にDHCPで(ホテルなどの)ネットにぶら下がり,特定のSSID/WEPで無線接続を可能にする.国内出張でも便利だが,特に有用なのは海外で,有線LANしかないホテルでも,これを使ってスマホを無線接続できる.
※8:海外のホテルだと部屋にスリッパの用意はない.外出用の靴をずっと履いているのも(日本人としては)くたびれるので,室内履きを持っていくのがお勧め.スリッパでもサンダルでも自分がラクなもので.

海外出張tips

  • 上で書かなかったが,一般に航空機の機内は大変に寒いので,夏であっても長袖のシャツは必須.欧米人は,Tシャツ・短パンで乗っている人がたまにいる.日本人は真似してはダメ.うっかり薄手のシャツで乗ってしまい,どうしても寒いときは2枚目の毛布をお願いするしかない.また,機内は大変に乾燥している.長時間フライトの場合,CAさんが定期的に水を配ってくれるが,できることならペットボトルの水を持ち込むのがよい.問題は,ペットボトルの類は原則としてセキュリティを通らないことである.成田や羽田は,セキュリティ後のゲートサイド(これを air side という)でペットボトルの水を売っているので問題ない.海外の空港では,air sideではペットボトルは売っていないか,売っていたとしてもゲート前にさらにもう一段セキュリティがあり,そこで廃棄させられることが多い.そういう場合は原則としてあきらめるしかないのだが,どうしても,という場合,それでも機内にペットボトルを持ち込む方法が2つ存在する.ひとつは,ペットボトルの水を免税店で買い,免税袋にパッキングしてもらうこと.こうしてもらえば,ワインなどと同様機内持ち込みが可能になる.ただし,免税袋は原則として目的地まで開けてはならないことになっているので,機内でその禁を破る行為はあくまで自己責任.もうひとつは,空のペットボトルをセキュリティ後(なんならゲート前のセキュリティ通過後の機内)までもちこみ,そのあとそれに給水すること.たまにこれをやっている人を見かける.私としては,そこまでするのなら,もうあきらめて機内でグラスの水をもらえばいいと思うのだが...
  • 上にも書いたが,私は原則として旅先では洗濯はしない(使い捨てる).だが,それでもどうしても何かを洗わなくてはならないとき,洗濯物をなるべく早く乾かすにはバスタオルを使うとよい.例えばTシャツを洗ったとする.あまり強く絞ると生地にダメージを与えるので,ある程度絞ったら,バスタオルの上に広げ,そのままシャツごとバスタオルを海苔巻きの要領でぐるぐる巻きにしていく.巻いたら,その上から体重をかけるなどして水分をタオルに移す.これだけで,広げたらかなり乾いている.バスタオル1枚で,シャツ類数枚程度はいける.海外のホテルだと,ダブルあるいはツインの設定で最初からバスタオルが2枚あるのも都合がよい.
  • 何はなくとも絶対に忘れてはならないのはパスポートとクレジットカード.これさえあれば,あとのものは忘れても大抵なんとかなる.パスポートは,行き先の国によって有効期限の残存期間にも注意すること.ビザが必要な国もある.クレジットカードは,買い物に使うのはもちろんのこと,海外では身分保証の意味で要求されることも多いので絶対に必要(クレジットカード会社の審査を通過した人間であること,および何かあった際,その決済に対してクレジットカード会社も一定の責任をもってくれること,が保証される).例えばほとんどのホテルでは現金決済は受け付けない.決済端末により,上限に達していないカードでも通らないことがあるので,複数枚持っておくのがよい.
  • 飛行機はいまどきはほぼe-ticketである.このとき実はパスポートの提示だけで(=氏名の確認がとれれば)乗れてしまうことが多いのだが,万一ということもあるので,紙で印刷していきチェックインカウンターではそれを見せるのがよい.タブレットなどでも可.e-ticketには一般に搭乗便などのスケジュール(itinerary)も書いてあるが,その中で真に有意なのは「航空券番号」(ticket number; どうやら航空会社による,発券した一連のチケットを束ねる内部番号)と「予約番号」(reservation number; 全航空会社共通の6桁の英数字)である.特に後者が大事で,提携航空会社便およびその他の便を利用する場合は,最終的に有意なのはこの数字になる.一連の航空券であっても,主たる発行会社と異なる便については,異なる番号が付いている.e-ticketにそれが書いてある場合もあるし,何らかのシステムにログインして探さないと分からない場合もある.予約が正常に通っていないなどの緊急事態には,この予約番号が必要になるので,できる限り事前に調べてから旅に出ること.(私自身,地球の裏側で「予約が通っていない」事態に遭遇した経験がある.その際は,事前に調べておいたこの番号を伝えて,それを頼りに探してもらい,主たる航空会社→アライアンスの提携会社→そこからさらに提携を受けている会社,の経路の途中で予約情報が正しく伝わっていなかったことが判明し,予約を入れ直して乗せてもらった.)
  • スーツケースが鍵式の場合,自宅でロックしたあと,当日,鍵を持っていくのを忘れた,という悲劇がたまに聞かれる.そういうときはスーツケースを壊す以外に開ける方法はない.複数鍵を用意して,ひとつをだいぶ前から財布に入れておくなどの自衛策が必要.なお,空港によっては予備の鍵を店で売っている場合がある.忘れたときは,ダメ元で案内所に尋ねてみよう.
  • 日本の入出国には,最近は無人ゲート(指紋認証方式)も設置されている.混雑して長い待ち行列ができるようなときは,こちらを使う方が遙かに速い.手続きは15分~30分程度でできるので,空港に早く着いて暇なことがあったらぜひ登録してみよう.日本国内のすべての国際空港で共通で,パスポートの残存期間だけ有効.
  • tips,というより余談.ノートPCのACアダプタは大抵の場合世界対応で,コンセント形状を除けば特に気にすることはない....と思っている人が多い.私も少し前までそう思っていた.しかしながら,実は,案外そうでもないのである.ACアダプタの類は,なぜか,アダプタ本体の箱状のモノのところで2つのパーツに分けられることが多くないだろうか?しょっちゅうそこで外れてイライラして,なんでこんなところで外れるようになってるんだ...と思ったりするわけだが,そういう場合,実は世界対応なのは外れたパーツのうち本体側だけで,そこより先,コンセントに挿す側は世界対応ではないのである.つまり,日本で販売しているPCであれば,世界対応なのはアダプタ本体側だけで,そこより先は日本の100Vにしか対応していない(ことになっている).電気店に行くと,ちゃんとこの部分の「世界対応版」が売られているので,それを買って付け替えてから旅に出ること.日本仕様のまま,コンセントアダプタだけ使って他国で使っても大抵動くが,その場合,高電圧に耐えられなくて炎上した場合は使用者責任になる.
  • 上に書いてないもので,スーツケースに放り込んでおくと便利なもの.はさみ(服を買ったときのタグ切りに),ワイン・ボトルオープナー(現地でお酒を買って飲みたい人はあると便利;ホテルでも借りられるが面倒くさい),ゴミ袋数枚(汚れた衣類を入れるほか,帰国時の荷物の分類に),目覚まし機能付き小型時計(部屋に時計がないホテルもある;でもいまどきはスマホがあれば十分かも)

海外SIMを使ってみよう

日本では道に迷ったとき,すぐ何とかmapsで地図を見て位置確認したりするわけだが,そういうのを一番使いたくなるのはむしろ全く勝手の分からない海外においてである.しかしながら,日本のSIM(後述)のまま海外でスマホを使おうとすると,いわゆる「ローミング」の状態になり,法外な値段を取られてしまう.(1日あたり数千円程度).滞在国と期間の長さに依るが,場合によっては現地のプリペイドSIMを買って使うと便利である.

SIMというのは,誰でもスマホの買い換えの時ショップの人が出し入れしているのを見たことがあるはずだが,スマホの心臓部分で,電話番号等契約者情報が入っている小さなカードのことである.大きさには通常,micro,nanoの3種類があり,概ね1cm四方程度である.日本では,原則としてスマホの販売会社と通信回線のキャリアが一致しており,SIMカードの自由度を意識する機会はほとんどないが,海外ではこの2つは切り離されており,他国を旅行する際は現地の通信キャリアのSIMを購入し,それに差し替えて,現地のスマホとして使うのが当たり前である.しかも,日本のようなサブスクリプション方式(月額方式)ではなく,プリペイドサービスもあるので,短期旅行者にも使い勝手がよい.多少の通話やデータ通信をする程度なら,一週間滞在して数千円のことが多いので,興味がある人はぜひ使ってみよう.

その際,以下の点に注意すること.

  • 自分のスマホはSIMフリーになっているか. 日本のスマホはデフォルトではその会社のSIMしか挿せない,いわゆる「SIMロック」がかかっている.これをキャリアのショップで外しておく必要がある.
  • 自分のスマホのSIMがどの大きさか. 現地SIMを買う際,SIMの大きさを伝えないと買えない.
  • 現地キャリアのAPN情報等. 新しいSIMを挿すときは,その会社の「APN情報」など,いくつかの情報をスマホに入力する必要がある.海外スマホでは,そのような作業が常態化しているので,SIMを挿すだけで自動的にその情報が読み込まれることが多いが,日本のスマホはそのようにできておらず,常に手動で設定しなくてはならない.この情報は,現地業者の販売員でもよく分かっていないことがあるので(向こうのスマホは挿せば自動ロードなので当たり前と言えば当たり前),日本を出る前にどういうキャリアを使うか大体の当たりを付けておき,各種サイトを参照してAPN情報等を調べておくのがよい.

「とびらの言葉」(日本応用数理学会論文誌)

以前,日本応用数理学会論文誌の副編集長をしていたとき,論文誌の巻頭言「とびらの言葉」を書きました.

これは学問的な文章ではなく,日本応用数理学会論文誌とそれをとりまく状況について,編集委員が思い思いの弁を述べるものです.私は,「論文を書くということ」について書きました.

よろしければご笑覧ください.

「とびらの言葉」(日本応用数理学会論文誌23巻3号(2013年))
(オープンアクセス)

”Aphorisms” Franz Kafka

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centerstar “From a certain point onward there is no longer any turning back. That is the point that must be reached.”
from “Aphorisms” by Franz Kafka

Kafkaの一言集,”Aphorisms”の一節らしいのだが,実は私はこの原書を知らない.原書はもちろんドイツ語.しかし上の英訳は有名で,あちこちに引用されている.私がこの台詞を知ったのは,Paul Bowlesの名著,”The Sheltering Sky”にて.この中の”Book Three”の冒頭に,この台詞が掲げられている.

「そこを超えるともう二度と後戻りできない,そういう段階が存在する.そこへこそ到達せねばならぬ」.(拙訳)

“a certain point”は,「瞬間」と日本語訳されることもある.この”point”が時間なのか,場所なのか,あるいはもっと抽象的な概念なのか,Kafkaが正確に何を意図していたのかは分からない.しかしここは,人間が行う様々な活動・行為の,ある「段階」ととりたいところだ.

趣味でも仕事でも,あるいはもっと高邁に,人生の全体であってもいい.人は様々な目標をもって生きる.そこへ漸近することの愉しみ,苦しみが,人を形作り,人生に色彩を与えてゆく.人により,時によって,それは穏やかな所為であるかもしれないが,魂を変形させるほどの強烈なものを望むなら,それには一定の覚悟が要る.

この線を越えてしまったら,もう後戻りはできなくなる.いまいる場所に,あるいはいまある自分の姿に,戻ることはない.あったはずの様々な可能性は,今自分が選ぼうとしているものを除いて,消え去ってしまうだろう.また,その先にあるものが喜びなのか悲しみなのかもわからない.だが,それを踏み越えて進まなければ,本気で望むものは手に入らない.少なくとも,魂を揺すぶるようなものは.Kafkaが言っているのは,そういうことではないかと私は思う.何も失わずに,何かを得ることはできないのだ.

“The Sheltering Sky”は,関係が冷え切ったある夫婦が,その修復を目指して,北アフリカを旅する物語である.しかしその修復はままならぬまま,夫は現地の熱病に倒れ,帰らぬ人となってしまう.ここまでがBOOK ONE/TWOである.続くBOOK THREEは,ひとり残された妻の物語で,冒頭の台詞はそこの開始地点に掲げられたものである.二人の旅は,夫の死という,「二度と後戻りできない」ところを越えていった.それは悲劇であるが,しかし,妻がその後の人生を生きていくために,「到達せねばならぬ」ところであった.また夫にとっても,たとえその臨界点が自分の死であっても,行き詰まった関係をどうにかするには,そこに「到達」する以外の未来はなかった.著者Bowlesは,そう言いたかったのではないか.