三部会連携「応用数理セミナー」
日時: | 2015年12月24日(木) |
場所: | 東京大学本郷キャンパス 工学部6号館 3階セミナー室AD |
〒113-8656 東京都文京区本郷 7 丁目 3-1 | |
主催: | 日本応用数理学会 |
計算の品質 研究部会 | |
科学技術計算と数値解析 研究部会 | |
行列・固有値の解法とその応用 研究部会 | |
「計算の品質」,「科学技術計算と数値解析」,「行列・固有値問題の解法とその応用」の三部会が連携し,
学部生・大学院生,企業の研究者・技術者を対象にした,「応用数理セミナー」を実施します.
初心者向きの内容を意識しておりますので,分野外の方も気軽にご参加いただけます.
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【概要】 計算を行うと同時に計算結果の数学的に厳密な誤差評価を行う精度保証付き数値計算は,今後の数値計算のあるべき姿の一つとして日々発展している.しかし,普及しているとは言い難いのが現状である.そこで,講演者は精度保証付き数値計算の普及を目的として,C++言語を用いたライブラリ (http://verifiedby.me/kv/) を開発している.本チュートリアルでは,それを元に,精度保証付き数値計算の仕組み,実装法,ライブラリの利用法などについて解説する.
【概要】 線形計算における事前誤差評価を用いた精度保証付き数値計算法について紹介します.精度保証付き数値計算においては,通常,丸めモードの変更を行うことにより丸め誤差を把握します.しかし,丸めモードの変更が困難な数値計算環境も存在しますので,そういった場合,事前誤差評価を用いた手法が有効です.本チュートリアルの前半では,丸めモードを変更した手法,丸めモードを変更しない手法を合わせて紹介し,後半では講演者らが取り組んでいる連立一次方程式の精度保証付き数値計算法について紹介します.
【概要】 スパース推定の概要を解説する.計測技術や計算機資源の発展により我々が扱うデータの規模は増大の一途をたどっている.特に,データの次元が非常に高い高次元データの出現により,古典的な統計的枠組みでは扱えないような状況が現れている.高次元データは多くの場合,所望の解析とは無関係な冗長な情報を含んでいることが多い.そのような冗長な情報を切り落とすために,パラメータを何らかの意味で低次元空間に落としこむ手法が有用である.そのような手法を総称して「スパース推定」と呼ぶ.冗長な情報を切り落とすためには組合せ最適化問題に帰着されることが多いが,それらは凸最適化問題に緩和することで効率的に推定を行うことができる.
本講演では,スパース推定におけるモデリングの例から,推定手法の統計理論を解説し,効率的な計算手法も紹介する.統計理論については幾つかの推定手法のリスクの上界や漸近分布を紹介し,いかにしてスパース推定が高次元問題において予測・推論を実現しうるかを解説する.計算手法については凸最適化手法を中心に解説し,大量データにおける計算に有用な確率的最適化手法も紹介する.
【概要】 近年ではコンピュータのクロック周波数は伸びておらず,半導体の技術の進歩に伴うコンピュータの性能改善は,主に並列性の拡大によるものとなっている.この傾向は今後も続き,組込システムからスーパーコンピュータに至るまで,ハードウェアの並列性はさらに増大していくと見られる.しかし,プロセッサの性能向上に比べてメモリおよびネットワークの遅延・帯域の性能向上は相対的に遅い.このためメモリアクセスやデータ通信などのデータ移動(広い意味で「通信」と呼ぶ)にかかる所要時間が,高並列による性能向上の足かせとなる傾向にある.
このような状況下では,アルゴリズムを改変して,演算量を増大させても,通信量や通信回数を減らすことができれば,より高速になる.このようなアルゴリズムは「通信削減(Communication-Avoiding)アルゴリズム」と呼ばれている.
本セミナーでは,特に疎行列計算に関する通信削減アルゴリズムについて講演する.(1) 共役勾配法などの連立一次方程式の反復解法,(2) 偏微分方程式の陽解法などのステンシル計算,(3) 反復解法に現れる疎行列・ベクトル積の3つについて説明する予定である.
なお,通信削減アルゴリズムは並列計算でなくても性能向上につながる場合がある.本セミナーでは通信削減アルゴリズムの初心者にもわかる説明を目指すが,線形代数の基礎は前提とする.