三部会連携「応用数理セミナー」
日時: | 2013年12月27日(金) |
場所: | 東京大学本郷キャンパス 工学部6号館 3階セミナー室AD |
〒113-8656 東京都文京区本郷 7 丁目 3-1 | |
主催: | 日本応用数理学会 |
行列・固有値の解法とその応用 研究部会 | |
計算の品質 研究部会 | |
科学技術計算と数値解析 研究部会 | |
「行列・固有値問題の解法とその応用」,「計算の品質」,「科学技術計算と数値解析」の三部会が連携し,
学部生・大学院生,企業の研究者・技術者を対象にした,「応用数理セミナー」を実施します.
初心者向きの内容を意識しておりますので,分野外の方も気軽にご参加いただけます.
=================================
お名前 :
ご所属 :
=================================
数値計算には丸め誤差の問題が常につきまとう。コンピュータの高性能化による御利益を
「高速化(量)」に使うのでなく、「質の向上」に使えば丸め誤差は削減できる。そして、現在は
手軽に高精度演算が利用できる時代になっている。
本チュートリアルでは、
(1) 高精度演算を実現する仕組み
(2) 最小限の手間で高精度演算を利用できる環境
(3) 高精度演算の効果とコスト
(4) 混合精度反復法の可能性
などについて述べ、これからのコンピュータ環境において、クリロフ部分空間法のような
丸め誤差の影響をうけやすい算法には高精度演算を用いた混合精度反復法が有望で
あることを示す。
偏微分作用素の固有値評価は偏微分方程式の近似解の誤差評価や非線形偏微分
方程式の解の検証などの数値解析について、重要な役割を果たす。この講演では、
有界な領域の上に定義される共役楕円型偏微分作用素に限って、有限要素法によ
る厳密かつ高精度な固有値評価のフレームワークを説明する。特に、高精度な固
有値評価を行うために、Lehmann-Goerischの定理と混合型有限要素法に関わる鞍
点理論を組み合わせることで新たな計算手法と理論を紹介する。
数値計算の基礎は線型代数の問題をコンピュータで解くことである。本講演では
線型代数の中でも基本的な問題である連立一次方程式に焦点を当て、その数値解
に対する精度保証付き数値計算法を紹介する。
前半は区間演算や連立一次方程式の誤差評価方法について紹介する。特に、誤差
評価式中に表れる区間の取り扱いについて重点を置いて述べる。後半では、高速性
を実現するために丸めモードの変更を用いた方法や行列積の事前誤差評価を用いた
方法を述べる。
近年筆者らが取り組んでいる京コンピュータにおける超大規模(1億原子・100ナノスケール)
量子物質シミュレーション[1]を紹介し、その数理を議論する。まず物理・産業の観点から概観し、
応用研究事例を簡単に紹介する。数理的視点としては、従来型の一般化固有値問題の代わりに、
一般化シフト型線形方程式に対する独自のクリロフ部分空間解法を用いている。これら線形計算
解法はQCDなどの他分野にも現れ、計算科学を支える基盤の1つと言える。種々の解法のうち
特に多重アーノルディ法[2]をとりあげ、厳密な保存則を満たすクリロフ部分空間理論の一例で
あることを示す。本研究は、実アプリ分野(物理学など)・数理分野・HPC分野の連携研究であり、
Application-Algorithm-Architecture co-designと呼ばれることもある。
[1] http://www.elses.jp, http://www.damp.tottori-u.ac.jp/~hoshi/
[2] T.Hoshi, et al, J. Phys.: Condens. Matter 24, 165502, 5pp. (2012)
更新履歴