作成者別アーカイブ: kenichiro

テンソルネットワークを用いる数値計算

担当:相島 健助

題目:テンソルネットワークを用いる数値計算

概要:
量子多体問題において,近年,高次元データをテンソルネットワークにより保持し,演算に関してもデータの圧縮と分解を巧妙に行う手法が開発され,従来扱えなかった規模の量子計算が可能になってきている.このような解法の代表例として密度行列繰り込み群(DMRG)法 [5] が挙げられ,他にも [3] のように特殊な粗視化による効率的な計算法が提案されている.一方,2010年頃より,線形計算の研究分野においてもテンソルトレイン [4] やタッカー分解のようにテンソルネットワークの一種に相当するデータ格納形式が注目され始めている.具体的には,上記の密度行列繰り込み群を交互最小二乗法の変種と解釈し,これを連立一次方程式や固有値問題のような線形代数的な問題,もしくは凸最適化問題や微分方程式等の数値解法に導入する研究が行われるようになっている [1,2].

本発表では,テンソルネットワークとそれに基づく数値計算について基礎的な説明を行い,その代表例であるテンソルトレインを用いる数値計算を中心に議論する.このような数値計算では局所的な行列(テンソル)の(近似)分解が重要な部品であり,特異値分解の数値計算は重要なツールである.上で述べたように反復法としては交互最小二乗法(もしくはその変種)が中心であり,これに対する収束性解析について現状の主な結果を述べる予定である.

参考文献:

[1] S. Holtz, T. Rohwedder, R. Schneider, The alternating linear scheme for tensor optimization in the tensor train format, SIAM J. Sci. Comput., 34 (2012), pp. A683–A713.

[2] T. Huckle, K. Waldherr, T. Schulte-Herbrüggenb, Computations in quantum tensor networks, Linear Algebra Appl., 438 (2013), pp. 750-781.

[3] M. Levin and C. Nave, Tensor renormalization group approach to two-dimensional classical lattice models, Phys. Rev. Lett. 99, (2007) 120601.

[4] I. V. Oseledets, Tensor-train decomposition, SIAM J. Sci. Comput., 33 (2011), pp. 2295–2317.

[5] S. R. White, Density matrix formulation for quantum renormalization groups, Phys. Rev. Lett., 69 (1992), 2863.